Chiral cell sliding drives left-right asymmetric organ twisting

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Recommended citation: Inaki, M., Hatori, R., Nakazawa, N., Okumura, T., Ishibashi, T., Kikuta, J., Ishii, M., Matsuno, K., Honda, H. (2018) "Chiral cell sliding drives left-right asymmetric organ twisting" eLife, 7:e32506. https://elifesciences.org/articles/32506

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簡単な解説

本研究は,当時の大阪大学 細胞生物学研究室(松野研) 助教だった稲木美紀子博士と共同で行った研究です. 松野研の主要テーマの一つであった,”細胞と器官における左右非対称性形成機構”に関するものです.

我々のからだは,遺伝的に決まった左右非対称性を示します. たとえば我々の心臓は,(ほとんど)左側に配置されます. この”臓器が左右非対称に配置されるしくみ”に関しては,大阪大学 発生遺伝学研究室(濱田研)によって端緒が開かれ,大きく研究が進歩しました. 一方,”臓器そのものが左右非対称なカタチになるしくみ“は,以前としてほとんど分かっていませんでした.
これに関して,以前より松野研ではショウジョウバエを用いた研究を行っており,細胞レベルの左右非対称な形態が,器官レベルの左右非対称なカタチを作ることを発見していました 1. これに関しては,ライフサイエンス新着論文レビューに詳しく解説されています. しかし,ここでの研究は,固定サンプルに対する研究だったため,細胞が時間的にどのように変化することで,器官が左右非対称な形態をとるかまでは分かっていませんでした.

本論文では,ライブイメージング解析を駆使することで,細胞レベルの左右非対称な形態が,左右非対称な細胞の動きを誘発することを示しました. これにより生じた細胞の左右非対称な動きが,器官を左右非対称な形態に変化させていることが示唆されました. 細胞レベルの左右非対称性が,階層を越えて,器官レベルの左右非対称性を作り上げる時空間的な過程を明らかにした点で,本研究は形態形成の新領域を開拓した重要な研究です.