Transgenerational epigenetic effect of kings’ aging on offspring’s caste fate mediated by sperm DNA methylation in termites

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Recommended citation: Takata, M.*, Takahashi, M.*, Ishibashi, T., Tasaki, E., Rueppell, O., Vargo, L. E., Matsuura, K. (2025) "Transgenerational epigenetic effect of kings’ aging on offspring’s caste fate mediated by sperm DNA methylation in termites" Proceedings of the National Academy of Sciences, 122 (24). https://doi.org/10.1073/pnas.2509506122

京都大学 プレスリリース

簡単な解説

本研究は,シロアリの王の加齢が,その子のカースト運命(= 生殖カーストか労働カーストか)にどのような影響を与えるのかを明らかにし,そしてその背景に精子DNAのメチル化というエピジェネティックな仕組みが関わっている可能性を検討したものです. これまで,社会性昆虫のカースト決定は環境要因のみで説明されると考えられていましたが,近年ではエピジェネティックな要因が関与する可能性が指摘されてきました.

研究では,ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)の若い王と老いた王を用いて交配実験を行い,その子のカースト分化を比較しました. その結果,若い王の子では生殖カーストになる割合が高く,老いた王の子では労働カーストになる割合が有意に低いことがわかりました. このことから,王の年齢というエピジェネティックな要因が子のカースト運命に影響を与えることが示されました.

精子は,卵と異なり細胞質が非常に少ないため,父親由来のmRNAやタンパク質が子のカースト運命を制御するとは考えづらいです. したがって,精子DNAのエピジェネティック修飾,特にDNAメチル化に着目してオミクス解析を行いました. その結果,王の年齢によって精子のメチル化パターンが大きく異なることが明らかになりました. 一部の遺伝子では,そのメチル化状態が子のカースト分化の傾向と相関しており,エピジェネティックな転写調節を受けることで子のカースト運命を決める遺伝子群の候補が得られました.

この研究は,加齢に伴う精子のエピジェネティックな変化が子世代の発生運命に影響するという,社会性昆虫におけるカースト継承メカニズムの一端を明らかにしました. 今後は,母親由来のエピジェネティック因子の影響の調査や,個々の候補遺伝子の機能を逆遺伝学的解析につなげていきたいです..

本研究では,私はメチローム解析およびイメージングを担当しました.