私が一人暮らしをしていた頃の話/今日はクラブに行かない - 猫まみれ太郎/月まで - Hump Back/午前4時、SNS - Hakubi
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修士課程の頃,私は大学から徒歩3分のところに下宿を借りて暮らしていた.
下宿していた頃は,研究そのものへただただ没頭する,人生で最もしがらみの無い最高の時間だった.
しかし,下宿していた期間を思い出すと,希望や楽しさと同時に研究の進まなさや自分の能力への失望感,将来への不安や,そもそもそんなことで思い悩む自分自身への苛立ちも蘇ってくる.
おそらく,こういう腐った感情ってのは博士号をとるまでに誰しもが通る道だろう.
思い出語りがてら,あの頃を思い出させてくれる曲を紹介させてください.
その下宿はなかなか悪くないところだった.
卒業にあわせて下宿を引き払うのだが,荷物を運び出したり掃除したりが面倒だから替わりに入りませんか,と後輩に紹介されたアパートだった.
私はその頃ちょうど修士過程に入り,生活時間の全てはラボに費やしたいと考えていたため二つ返事でその下宿での一人暮らしをはじめることにした.
家賃は4万円/月と,まあ普通くらいだが,部屋は広くて,なによりベランダの屋根が広く,雨でも洗濯物が濡れないところが気に入った.
下宿はこのあたり
これが初めての一人暮らしだったし,ありがたいことに返済不要の奨学金をとれて経済的にも完全に実家から独立したため,何にもとらわれない自由への喜びと不安で,今思い返してもエモい気持ちで下宿ぐらしをスタートした.
下宿での最初の一晩なんて,ドキドキして眠れなかったくらいだ.
当時の生活はこんな感じだ;
- 朝起きたら服を着替えて,そのまま家を出る
- ラボに着いたら,歯磨きをしながらiMacを付ける
- コーヒーを淹れて,昨日のうちに買ってラボに置いておいたパンを食べる
- 実験
- 昨日の夕飯の残りを食べる
- 実験
- 夕飯の買い出し
- ラボで夕飯の調理.白米を4合炊くのと同時に,別の炊飯器にやっすい鶏胸肉と野菜とトマト缶をぶち込み,保温ボタンを押して煮込んだもの
- 実験
- 論文読み
- 帰宅,シャワーを浴びて寝る
夜型だった私は,10時半くらいに起き,帰宅はいつも深夜2時くらいだった.
未だに話のネタになるのだが,当時,私は食事のメニューを考えるのが嫌で,365日ずっと同じ食事(鶏胸肉と野菜のトマト煮込み)を摂り続けていた.
別に美味しくもない食事なのだが,半ば義務的に同じ食事を続けていたため,最後の方は鶏胸肉を見るだけで吐きそうになったことを思い出す.
夜型だったのも良くなかったのだけれど,あのころ,メインテーマの実験が進捗せず,私は苛立ちと不安で鬱っぽくなっていた.
進捗が悪いのはテーマそれ自体の難しさもあったのだけれど,それはどちらかというとマイナーな理由だ.
私は,自分の能力が足りないことと,何より自分の努力の足りないことが問題の原因だと,はっきりと分かっていた.
でも,口先だけはさもデキる奴のように嘯いて,惨めな自分としっかりと向き合うこともできなかった.
帰り道,電灯の少ない夜道を歩きながら,無性に虚しくて,下宿に帰っても虚ろで.
全く使っていないシンクに無意味に水を流してみたりして.
シャワーを浴びることすら嫌になって,着の身着のままでベッドに潜り込んで,息を潜めて寝るような毎日だった.
つらつらと病んだことを書いてきて,とくに解決することもなく思い出がたりは終わる.
まあ,今もあの頃と同じくらい腐っているのは確かなんだけど,鬱っぽさと付き合いながらここまで来た.
別に,あの頃を乗り越えたからどうこうってことじゃ無いんだけど,あの一人暮らしをしていた修士時代の気持ちが,今の自分を確かに作っていることを私は知っている.
そんなこともあり,あの下宿時代を思い出させてくれる曲を聴くと,急に切なくなるのだ.
この曲,エモすぎないか.
私は猫まみれ太郎さんをこの曲で知ったのだけれど,初めて聴いたときから涙なしにこの曲は聴けない.
別に幸せじゃないわけじゃないよ
別に幸せでもないけど
なんとか生活はできてるしギリギリのとこ攻めてるけど
自由はなかなか効かないけど
そして毎日は過ぎていくけど
大丈夫,大丈夫,
楽しくやってるよ
あのとき,あの場所で感じていたのと同じことを歌ってくれている.
帰ったら洗い物をするの
今日の嫌なことも水に流すの
もう疲れているから
夜ふかしもしないで日付を越えたころに寝るの
このリリックをこのメロディで囁くように歌われるのはエモが過ぎる.
ただ寝るためだけの下宿に帰って,いつものルーチンをこなしながら,今日のダメな自分が排水溝に流れていくのを想起してシャワーを浴びる.
原因の分からない疲れをベッドに放り出して,薄暗い不安が充填された部屋で寝る.
あの感覚がそのままそっくり浮かび上がる.
どうでもいいが,学部時代の友人が,猫まみれ太郎さんと懇意であることを最近知った.
彼を介して,ずっと前から猫まみれ太郎さんのファンです!と伝えられた.
少しうれしい.
もう一曲.
Hump Backって反則じみたエモさがあるよね.
3ピースガールズロックバンドってのもたまらんし,ボーカル林萌子の甘酸っぱすぎる声,現状を見つめる冷徹な歌詞.
ああなんか飽きてきたんだ
ああちょっと疲れが溜まってるんだ
暮らしは良くはならない
髪でも切りに行こうぜ!
あの頃の自分に聴かせたら,間違いなく頭丸めてたろうな.
もうひとつ.
Hakubiも良いんだよなあ…
やっぱりボーカル片桐の声が甘酸っぱい.
考えないようにしてた明日はどう生きていこうかなんて
思うだけで吐き気がするんだ
考えないようにしてた「来年の今頃は」なんてさ
生きているのかすらわからないのにさ
こういうのに弱いんだろうな,自分は.
本当にアホくさい.
なんなんだ,このポストは.
我ながらメンヘラくさくて驚いているし,内容もとりとめがない.
とはいえ,何となく書きたくなりました.許して.
時間を置いて書き直すかもしれんし,別のポストに続くかも.